コラム/ columns

腹腔鏡手術でキズの数や大きさが増えてしまう可能性のある症例とは

2022/03/15

当院の腹腔鏡手術はほぼすべての患者さまで5ミリ径の鉗子とスコープが用いられ、それに見合うキズ3か所で済みます。
では、例外的にそれよりも数や大きさが増えてしまうケースはどんな時でしょうか。

大きく分けると、患者さまが腹部の手術を経験したことがあるか、もしくはヘルニアが巨大あるいは一時なりとも押し戻すことができない「非還納」の状態にあるか。

いずれにしましても、当院ではこれまでのところ、こうした困難症例でもキズの数や大きさが増えてしまうことはほとんどありませんでした。
あったとしても、大切開に及ぶことに至らず、せいぜい通常のキズが1か所余計に増えたという程度の結果です。

当院の経験では、以下の通りとなります。

  • キズの数や大きさが増えてしまうリスクが比較的低いと思われる腹部手術既往
  • 虫垂切除(いわゆるモウチョウ)
  • 帝王切開
  • 子宮・卵巣などの婦人科手術
  • 腹腔鏡下胆嚢摘出術
  • キズの数や大きさが増えてしまうリスクが比較的高いと思われる腹部手術既往
  • 前立腺全摘・膀胱全摘など泌尿器系の大手術
  • 胃切除・大腸切除という消化器系の大手術
  • 開腹による胆嚢摘出術
  • 腹膜炎手術

 

病院によっては、上記既往がある時点で腹腔鏡による鼠径ヘルニア手術はリスクが高いため、最初から断念し行えないという立場をとるところも多いようです。

しかし、当院は、安全に行える限りは行う方針で未遂となったり、日帰りが困難になったりしたことはありません。
もちろん、大きな責任を伴った医療行為ですので、腹部手術を経験された患者さまについては個別に慎重に検討しますが、これまでのところ、当院はリスクの高低にかかわらず腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を完遂していますのでご安心ください。

なお、時折、遭遇する誤解として、腹腔鏡手術に断念し、開腹になってしまった場合は日帰りできないのではないかということ。
これは事実ではありません。
それだけで日帰りが困難になることではありませんので、万が一開腹とならざるを得なくても安全にご帰宅いただけます。

それでも大きなキズはなるべく避け、痛みも軽くしたいという配慮から当院は可能な限り腹腔鏡手術を行ってまいります。

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■文責
医療法人社団博施会理事長 大橋 直樹
(日本外科学会認定外科専門医)

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