コラム/ columns
腹腔から観察するとごく普通のⅠ型ヘルニアであるものでもピットフォールとなるケースがあります。
ひとつはde novoでした。
もう一つは今回のテーマ「脂肪腫」です。
標準的な腹膜環状切開&鼠径床の剥離露出を済ませたところで安心してはいけません。
メッシュを敷設する前に精索脂肪腫がないかさがしてみてください。
今回の症例動画ではそれもかなり大きい。
見落としたままメッシュを敷設して終了した場合、患者さんは術後も症状を訴え続けるおそれがあります。
実際にそうした失敗体験の症例報告もされています。
ラパヘルではこのひと手間をかけることを忘れてはいけません。
精索から剥離した脂肪腫はどうすればいいのかも一つの課題です。
当科では切断して摘出することを基本としていますが、鼠径床を超えて後腹膜側に広く続いている場合は切除の臨床的意義が疑わしいこともあります。
切除しない場合は、少なくとも内鼠径輪に迷入しないようにメッシュを配置すべきです。
当科ではプログリップを使用することで背側のメッシュのめくれを防ぐことで迷入も回避できると考えています。
なお、ここでは脂肪腫と表現しましたが、良性であっても腫瘍性増殖によって増大したものと定義できるのかは謎で「腫瘍」と呼んでいいかどうかの判断は当科ではつきかねます。
単に「過大な精索脂肪組織」と呼んだほうがよいとも思われ…しかしながら、この議論は治療論としては本質的ではないですね(笑)