コラム/ columns
2018年は鼠径ヘルニアの治療に関する国際的な方針について大きな動きがありました。
International Guidelines for Groin Hernia ManagementというガイドラインがHerniaSurge Groupという医師団の手により制作されたのです。
このグループは世界各地のヘルニア学会の代表を含む19か国、計50名の専門家で構成された組織です。
ガイドラインは165ページにわたる膨大な資料で、医学的根拠に基づいて多種多様な論文をスコア化されています。
その数3,500以上。
166の臨床的疑問に対し136の見解と88の勧奨事項が記載されています。
「このガイドラインは法的な強制力はないが、もしこのガイドラインに沿わない治療方針を患者に勧めるなら、その旨を患者に説明し公的記録に収載するべきである」という厳しい一文まで付記されていました。
ガイドラインによると、腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術については、外科医の技術・教育・経験により選択されるべきであると述べられています。
つまり、正しく行われるのであれば患者さんのキズの小ささ、痛みの少なさ、社会復帰の早さに貢献するが、経験不足の医師が行おうものならメリットを享受できないということになります。
そして、この腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術以外の方法で使われるメッシュはたくさんの種類が市場に存在するが、リヒテンシュタイン法用のメッシュ以外のものは勧められないとも記載されています。
わが国ではプラグやPHS、UHSといった立体構造をもったメッシュが普及しており、このガイドラインの発表に戸惑っている外科医は多い模様。
世界のヘルニア治療の動向にも目が離せない状況です。
幸い、私たちは自分たちの活動が世界のガイドラインにも認められたようなものですが、最新の情報に遅れをとらないように注意して日々の診療にあたってまいります。