コラム/ columns
女性の鼠径部ヘルニアの原因
鼠径ヘルニア手術を生涯に受ける割合は、ある研究によると男性30%、女性3%となっております。
この数字の是非はともかく、いずれにしても女性の方が少ない傾向にあることは間違いないと思います。
手術を受ける割合でみると、日本全国で年間約2万人の女性が鼠径ヘルニアの手術を受けています。
また、全体として外鼠径ヘルニアが多いのですが、50代以降の女性では、内鼠径ヘルニアや大腿ヘルニアなどの他の鼠径ヘルニアの発症も見られるようになります。
特に大腿ヘルニアは高齢女性に多いとされ、嵌頓症状を起こし緊急手術となるケースがあります。
女性の鼠径ヘルニアの特徴
女性の鼠径ヘルニアの特徴として、
・鼠径ヘルニアと大腿ヘルニアを同時期に存在する
・大腿ヘルニアは女性の方が発症しやすい
以上の点が挙げられます。
また、鼠径ヘルニアと間違われやすいあるいは併存するために個別の配慮が必要というものがあります。
以下のような病気があることも、女性の鼠径ヘルニアの特徴です。
- 子宮円靭帯静脈瘤(子宮円索静脈瘤)
妊娠中に初めて発症した「ふくらみ」や「しこり」は、鼠径ヘルニアとは限りません。
そけいヘルニアと症状が非常に似ていますが、治療方法は異なります。
症状を正しく診断する必要があります。
また、ときに内部の血液が固まると痛みを伴う事があります。
多くの場合は出産後に自然治癒し、手術による治療はほとんどありません。
- ヌック管水腫、ヌック管嚢腫
若い女性に多く見られるヌック管嚢腫があります。
ヌック管水腫、ヌック管嚢腫はお母さんのお腹で成長する際に、通常ならば自然に引っ込んでしまう腹膜鞘状突起という部分が鼠径部に飛び出したまま誕生します。
鼠径部に入り込んだヌック管の内部に腹水が溜まってしまっている状態です。
多くの医療機関でヌック管の病名が言われていますが、筆者は安易につけるべき病名ではないと考えています。
通常のヘルニア嚢に腹水が溜まっているだけで、いずれにしても鼠径ヘルニアに準じた手術が必要なものもあります。
- 鼠径部子宮内膜症
若年女性の鼠径部に発生する有痛性腫瘤。多くは鼠径ヘルニアが併存しますが、腫瘤を見落とし、摘出を怠ると手術をしても症状が改善しないので、筆者のチームでは常に注意をして診療にあたっております。
治療しないでいるとどうなりますか?
病気が進行して大きくなったり、痛みや違和感を伴ったりする場合があります。
進行したヘルニアの手術の難易度は高くなる可能性があります。
女性の大腿ヘルニアは体表の診察だけでは診断することが難しいことも多くあります。
とくに大腿ヘルニアは緊急手術になる場合もあるため、鼠径部のふくらみを感じたら診察を受けることをおすすめします。
最後に
普段聞くことのない病名から不安な気持ちになっておられる方もいらっしゃると思いますが、治療することができる病気ですのでご安心ください。
手術の時期決定は最終的には患者様のお気持ち・状況次第ではありますが、当院では日帰りで苦痛の少ない治療を提供しています。
まずはお気軽にご相談ください。
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■文責
医療法人社団博施会理事長 大橋 直樹
(日本外科学会認定外科専門医)
〇当院の鼠径ヘルニア日帰り手術に関してマンガを作成いたしましたので、是非こちらもご覧ください!!