コラム/ columns

教科書に載らない鼠径ヘルニア手術 denovoの剥離方法

2020/03/06

 

腹膜鞘状突起の開存に由来しないⅠ型の鼠径ヘルニアをde novoと呼んでいます。
いわば俗称ですが、腹腔側にヘルニアのうが固定されている通常のⅠ型鼠径ヘルニアと比べると、手技の定型化の難易度が高い、精索から分離せず内鼠径輪の中に遺残させたままメッシュを敷設すると、症状改善しえない惧れがある、脂肪を主体とするde novoのザックの剥離の際はしばしば精索のコンポーネントを損傷する惧れがある、de novoを術前に知りえるにはしばしば困難を伴うなど、一筋縄にはいかぬ要素が多いと思われます。

動画のポイント

de novoでは一般的には腹膜の環状切開は必要ないとされる。
しかし、当科では最終的な腹膜縫合時のメルクマールをつけやすくするために行うことが多い。
背側のフラップが長すぎると最後の連続縫合時に帳尻をあわせる際に難易度があがってしまうからである。

超音波凝固切開装置は必要時のみとしている。
これは切る、これは温存というのがしっかりわかった上なら出番は少ないと思われる。
出血しない安心感に突き動かされる手術はときに、精巣動静脈切断などのエラーを引き起こしえる。

毎日ヘルニア手術という経験値にものを言わせた手技なので、一概に真似を推奨するものではない。
ここは大丈夫、ここは危ないというのは、断定できない以上は基本にたちかえり、剝離鉗子でより細かく分解して切離すべきである。

層を意識するのは重要構造の破壊を防ぐためである。
最終的なアウトカムに影響ない程度なら、無用に拘泥しないほうがよい。
動画でもちょっと違うなと思いつつも、入りやすいところ、はがしやすいところ、止血が容易なところに優先的に入っていっていることがある。

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