コラム/ columns
もし鼠径ヘルニアになったら、どの医療機関にかかればいいのか?という疑問も含めて、根拠をハッキリさせながら解消していきたいと思います!
最も大事な視点は…鼠径ヘルニアを専門として扱っているドクターか?
まず、専門ではない医師を含め、鼠径ヘルニアの手術をしている医師はとても多いです。
なので、餅は餅屋といいましょうか、鼠径ヘルニア手術に特化し、これをライフワークとして、全てを集中している先生に手術を行ってもらうのが、一番間違いがないと思います。
鼠径ヘルニアの手術は、患者さんの身体への負担は、臓器の大手術と比較して少ないです。
そのため、大きな病院などでトレーニングも含めて経験値の浅いドクターに任されることが少なくありません。
その道のエキスパートの手で行われている鼠径ヘルニア手術は、手術全体の中では、まだまだ少ないのだと思います。
そういう意味で言えば、手術をする医療機関を選択するポイントのまず一点目は、鼠径ヘルニアの日帰り手術経験の多い医師にやってもらいましょうということになります。
(※さらにポイントとして言えば、腹腔鏡の手術全体の件数ではなく、「”鼠径ヘルニアの”腹腔鏡手術の件数」という視点で考えてみると良いでしょう。)
クリニックによっては院長先生が鼠径ヘルニアを本業としてやっていない、外科専門医ではないケースもあるようです。
その場合、院長先生は鼠径ヘルニアの手術を執刀したことはなく、とりあえず鼠径ヘルニアの手術をやった経験がある程度のアルバイトの医師で回していることもあります。
やはり日帰り手術後のフォローアップは外科医の院長が責任をもって行うべきだと考えており、当院では専用ダイヤルを用意しております。相談があれば全て外科医の院長がお答えし、何かあったらすぐ動くことができます。
院長が鼠径ヘルニアの手術を本業でやっているからこそ、 何かあったときの対応やアフターフォローも、オペレーションをしっかり組むことができるのではないでしょうか。
実績を見るのもポイントです!
もちろん、立地が良いとか、施設が綺麗とかそういった視点も重要だとは思いますが、何よりも一番大事なのは、医療の質だと思います。
しかし、どうやって医師の腕前を見極めるか?ホームページだけを見ても判断は難しいと思います。
見るべきポイントとして、例えばヘルニア学会や、勉強会・研究会などで、討論したり発表を積極的にやっている、もしくはそのような勉強会を主宰できるだけの経験と技量があるということが、間接的なものではありますが、一つの腕前の証明にはなるかと思います。
関連して、教育活動、つまりはこれからの若いドクターに助言や教育を積極的に行い、業界をリードするような活動をしているかがひとつの参考になると思います。それも、教育をできるほどの経験と技量があるという証明になるかと思います。
当院でも、日帰り手術研究会を主宰するなど、患者さまにとっていい医療が広がることを目指し活動を行っております。
受け入れる症例の裾野の広さも一つの指標です
他の視点ですが、再発症例も日帰り手術ができることや、女性特有の症例(Nuck管水腫)を断らないというのも目安になるかと思います。
当院でも私が全例患者さんを診察してお伝えしているからこそわかることですが、
鼠径ヘルニア手術の難易度はピンキリです。
そんなに難しくなさそうな症例から、ちょっとこれは手間がかからないか…と我々も心配するような方まで、いろんな方がいらっしゃいます。
そのため、難しい症例にもきちんと対応できるというのはひとつのアピールポイントかと思います。
”比較的簡単なものしかできません”という医師にやってもらうのと、”うちは難しい症例でもできるよ”という医師と、自分がたとえそんなに心配ない状態であったとしても、いざ手術をお願いするならどちらの医師にやってもらいたいか?ということかと思います。
再発症例のように難しい手術は避けた方がクリニックとしてはリスクが少ないのかもしれません。
ですが、当院は困ってる人の役に立ちたい、行き場がなくなった患者さんの最後の砦でありたいという思いで、再発症例・女性特有の症例(Nuck管水腫) ・ご高齢の方の手術というのも積極的に受け入れています。
手術専門機関だからこそ、口コミも参考になるかと思います
選び方の観点では、意外とGoogle等の口コミはひとつの参考になる情報かと思います。
普通の外来クリニックですと「接遇が悪かった」といった口コミなど、医療の本質ではない評価も多いかと思います。
もちろん、そこもクリニックとしては重要な要素ではあるかと思いますが、手術専門のクリニックは「オペをした後の術後の経過」がどうかというところで医療機関の評価が左右されると思うので、そのような評価があれば一つ指標にしてもらえると良いのかなと思います。
情報を開示しているか、ということも重要な要素です
全身麻酔で手術を行いますので、医療機関で行われてる手術というのは、ブラックボックスになりがちです。そのため、きちんと情報を開示してるかどうかもすごく重要な要素だと思います。
どんな医療機関でも、手術後のトラブルが100%発生しない、というのはありえないことです。その点を包み隠さず公平に発信しているところは、安心できるかと思います。
ホームページを確認する際は、手術件数や、合併症の件数といった公開統計、このようなものをきちんと開示しているかどうかは信用を判断する材料になるかと思います。
当院は開院当初より手術実績を公開し、1400例の時点で学術論文を刊行しています。
https://www.tokyogeka.com/column/data/
その他、考えられるポイントはあるのでしょうか?
よくご質問いただくのは、鼠径ヘルニアの手術は切開法が良いのか?腹腔鏡での手術が良いのか?ということです。これは、いくつかの比較要素がありますが、費用が安いのは確かに切開法です。
しかし、術後の経過や傷跡の小ささといった面で安心なのは腹腔鏡での手術だと思います。
費用がやや高いですが、鼠径ヘルニアの手術は、多くの方はおそらく人生で1回きりだと思います。だからこそ、1回きりの手術を後悔なく行うという視点で、術式を考えていただくのがよいのではないでしょうか。
また、手術に使用している「メッシュ」も一つの選定基準です。
鼠径ヘルニアの手術では体内に挿入するメッシュを用いるのですが、それは痛みの発生を防ぐということと、再発を防ぐ目的で使われます。
メッシュは手術の成果に関わる重要な要素であり、メッシュのずれや、めくれによる再発が起こってしまっては、意味がありません。
メッシュの開発・生産には多くの医療材料メーカーが参入しています。東京外科クリニックでの鼠径ヘルニアの手術は「プログリップメッシュ」をこだわって使用しております。過去には工場からの出荷が滞ったためメッシュが品薄になってしまったことがありました。そのような場合には、他のメッシュを使わず、手術の一時制限を検討したこともありました。
やはり1回きりの手術にもベストを尽くされなければいけないという想いがある以上、妥結はしないという判断は正しかったとは思います。
メッシュについて、詳しくはこちら▼
https://www.tokyogeka.com/column/mesh_shortage/
※記事執筆時点では供給は安定しておりますので、ご安心ください。
以上、鼠径ヘルニアの手術を考えた際に、医療機関を選ぶポイントをお伝えいたしました。
参考になれば幸いです。
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■文責
医療法人社団博施会理事長 大橋 直樹
(日本外科学会認定外科専門医)
〇当院の鼠径ヘルニア日帰り手術に関してマンガを作成いたしましたので、是非こちらもご覧ください!!